こんな人には秘密証書遺言がおすすめです

遺言書には3つの方式があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

このうち、よく利用されるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

一方、「秘密証書遺言」はほとんど利用されることはありません。

しかし、人によっては、「秘密証書遺言」の方が利用価値がある場合もあります。

 

秘密証書遺言とは?

「秘密証書遺言」とは、

  1. 名前の通り、内容を秘密にした遺言書を自分で作成し、
  2. 封印した状態で公証役場に持ち込み、
  3. 公証人にそれが遺言書であることを証明してもらい(このとき、証人2人に立ち会いが必要です)
  4. 遺言者と証人2人が署名押印し、
  5. 遺言者が自分で遺言書を保管する、というものです。

秘密証書遺言のデメリット

1.無効リスク
遺言書の内容については、公証人は関知しませんので(作ったという記録だけが残る)、内容に不備があった場合は無効になるリスクがあります。

2.未発見・紛失リスク
秘密証書遺言は、公正証書遺言のように公証役場では保管してくれず、遺言者本人が保管しなければなりません。そのため相続人が見つけてくれなかったり、紛失してしまうリスクがあります。

3.お金が少しだけかかる
公正証書遺言ほどではありませんが、自筆証書遺言よりはお金がかかります。
・公証人への手数料:11,000円
・証人への謝礼  :5,000~10,000円/1人 程度(証人の手配をしてもらう場合)

4.家庭裁判所で検認をしなければならない
公正証書遺言のように、公証役場で内容の確認をしてはくれないので、自筆証書遺言(保管制度未利用)と同じように、家庭裁判所で検認(チェック)を受けなければなりません。

秘密証書遺言のメリット

デメリットだけ見ると、安く・早く作りたければ自筆証書遺言、確実に遺言を残したければ公正証書遺言の方が、それぞれ良いように見えます。

しかし、秘密証書遺言にもメリットも存在します。

1.内容を秘密にできる
一番のメリットは、名前の通り、内容を誰にも秘密にできる点です。

公正証書遺言の場合は、公証人と証人2人にも内容を見られてしまいますが、秘密証書遺言なら遺言書の存在は明確にしつつ、内容は公証人にも証人にも秘密にできるというメリットがあります。

ただし、遺言書の内容の検討や作成を一緒にした人がいれば、その人は内容を知ってしまうことにはなります。

2.偽造のリスクがない
秘密証書遺言は、遺言者本人が封印し、さらに公証人が封紙に署名をします。
そして、遺言書が作成された事実は公証役場と証人が把握しています。

そのため、開封されてしまうと、秘密証書遺言としての法律上の効果が認められなくなってしまいますので、偽造や改ざんを防ぐのに役立ちます。

なお、偽造リスクがない点は、公正証書遺言及び自筆証書遺言(保管制度利用)も同じです。

3.パソコンで作成できる(署名以外)
自筆証書遺言の場合は、近年の改正により、財産目録の部分はパソコン作成などが可能になるなど、作成がだいぶ楽になりましたが、それでも本文は自筆で書く必要があります。

一方、秘密証書遺言は、署名を除き、本文もパソコン作成が可能です。

また、他人の代筆でもOKです。

 

秘密証書遺言をおすすめする人

前述したメリットを踏まえて、秘密証書遺言をおすすめする人を挙げてみたいと思います。

遺言書の内容を知られたくない人

遺言書の内容を他人(公証人・証人)に知られたくないという人や、推定相続人に生前中は内容を知らせたくないという人には、秘密証書遺言がおすすめです。

身体的衰えにより字を書くのが難しい人・余命宣告された人

判断能力はしっかりしているものの身体的衰えにより字を書くのが難しい人や、同じく判断能力はしっかりしているものの余命宣告をされ時間的な余裕がない人にも、署名・押印さえ何とかできるのであれば、秘密証書遺言がおすすめです。

  1. 本文は誰かに内容を伝えて、パソコンで作成してもらい(この場合は専門家がおすすめです)
  2. 署名・押印だけ本人にしてもらい、
  3. 公証人と証人2人に出張してもらって手続きをすることで(出張費用が加算されます)、

遺言者本人の負担と時間をあまりかけることなく、遺言書を作ることができます。

 

まとめ

秘密証書遺言を作成する際は、特に専門家(弁護士、行政書士、税理士など)に相談されることをおすすめします。

前述したデメリットのうち、「無効リスク」と「未発見・紛失リスク」を低減させることができ、本文作成を代行してもらうのであれば秘密を守れるからです(これらの士業には守秘義務があり、違反すると処分を受けるからです)