合同会社の相続の注意点
個人事業主が亡くなったら、事業で使っていた財産が相続で家族に引き継がれますし、株式会社の社長が亡くなったら、その会社の株式が相続で家族に引き継がれます(社長が株主でもあるという前提)。
小規模ビジネスで近年利用が増えている合同会社についても、同様に「社員」(株式会社で言うところの株主兼取締役)が亡くなれば、その「持分」(株式会社で言うところの株式)が相続で家族に引き継がれると考えてしまいそうですが、合同会社の場合は少し事情が異なってきます。
目次
「持分」は相続の対象にならない(払い戻しを受けることはできる)
「会社法」という法律では、誰かが合同会社に「加入」すること(「社員」になること)と「退社」すること(「社員」を辞めること)について、次のように定めています。
- 定款を変更して、その人を社員にすることを定め、出資を完了すれば、社員になれる。
- その人が死亡すれば、社員を辞めなければならない(「法定退社」と言います)。
そのため、「社員」が亡くなったら、通常はその地位と持分は家族には相続されません。
ただし、家族には何も残らないわけではなく、持分の払い戻しを受ける権利があります(「払戻請求権」と言います)。
「社員」が1人もいなくなると、合同会社は自動的に「解散」となってしまう
もし合同会社の「社員」が1人だけという状況で、その「社員」が亡くなってしまうと、その合同会社には「社員」が1人もいなくなってしまいます。
「会社法」では、そうなってしまった場合には、自動的に「解散」となってしまいます。
「解散」となってしまうと、それ以上事業活動を継続することはできなくなってしまい、後は会社をたたむ活動しかできなくなってしまいます。
合同会社を継続させたければ、少しだけ工夫が必要
自分が亡くなったら会社をたたんでしまっても構わない、という方ならいいかもしれませんが、
- 家族で事業を営んでいる(自分が亡くなった後も事業を継続してほしい)。
- 従業員を雇っている(会社が無くなってしまえば、辞めてもらわなければならない)。
といった場合には、少し工夫が必要です。
定款に相続があった場合の定めをしておく
「会社法」では、上に書いたように「社員」の地位と「持分」は自動的に相続されないことになっていますが、一方で「定款」に定めがあれば、「社員」の相続人に「持分」を承継させることが可能です。

合同会社MTOコンサルティングの定款です。 第14条第2項に定めがあります。
「社員」を2人以上にしておく
「社員」が2人いれば、どちらかが亡くなったとしても、もう1人残っているので、合同会社は存続できます。
家族で事業を営んでいる場合は、家族(特に事業を引き継ぐ予定の人)も社員に加えておくとよいかもしれません。
注意点は、合同会社の場合は出資割合・金額にかかわらず、「1人1議決権」なので、意見対立が起きると経営に滞りが生じる点です。
実際の業務を担う「業務執行社員」を1人だけにしておくと、これを避けることができます。
(業務執行社員が亡くなったら、残った「社員」が業務を担うことになります。)
個人事業主として事業を引き継ぐのもあり
上2つの方法は、合同会社を存続させるための方法ですが、事業形態にこだわらないのであれば、会社の財産や従業員を相続人が引き継いで、個人事業主として事業を継続するのでも構いません。
ただし、解散の手続きはしなければならないので、事前の対策をしていなかった時の手段としてお考えください。
まとめ
合同会社は、株式会社に比べて安価で設立できる半面、会社運営や相続の際は注意が必要です。
なお、「会社設立freee」なら、定款に相続があった場合の定めを入れてくれます。