事業所得と雑所得の違い
持続化給付金は、当初は個人事業主(事業所得のある人)や会社などが対象でしたが、途中から雑所得で申告していた人などにも対象が拡大されました。
同じ仕事をしていても、そのやり方によって【事業所得】になったり、【雑所得】になったりします。
そして、どちらに分類されるかによって、税金計算上の扱いも変わってきますので、注意が必要です。
目次
個人の場合は所得が10種類に分類される
個人の場合は、発生の状態に応じて、その収入が10種類に分類されます。
- 事業
- 不動産
- 利子
- 配当
- 給与
- 雑
- 譲渡
- 一時
- 山林
- 退職
所得の計算の仕方は、【収入ー経費】が基本ですが、
- 所得の種類によってやり方が少しずつ違ったり、
- 特別控除額や調整があったりなかったり、
- 赤字が出た場合に他の所得の黒字と相殺できたりできなかったり、
- 適用される税率が違ったりします。
この中で、事業所得とは「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」と定義されています(国税庁HP)。
一方雑所得とは、他の9つの所得のどれにも当てはまらないものを言います。
雑所得の一例として、年金(公的年金や個人年金)や仮想通貨の運用益などがありますが、その他に「事業から生じたと認められるもの以外のもの」として、原稿料やデザイン料、講演料などが国税庁HPで列挙されています。
この「事業から生じたと認められる」というポイントが【事業所得】となるか【雑所得】となるかの分岐点となります。
「事業から生じたと認められる」判断基準
「事業から生じたと認められる」かどうかを判断するには、4つの基準があります。
反復・継続しているか(しようとしているか)
その仕事を単発ではなく、ずっと続けている場合(あるいはこれから続けていこうとしている場合)は、事業として認められやすいです。
上の「原稿料やデザイン料、講演料など」を例にすれば、それを仕事としている人(作家、デザイナー、コンサルタントなど)には事業所得となりやすいですが、別の仕事の片手間で時々やっている程度では事業所得としては認められにくく、雑所得となりやすいです。
お金や利益をきっちり取っているか
事業であれば、営利を追求するはずですので、料金をしっかり頂戴しなければなりませんし、利益が取れなければなりません。
趣味の延長で自分が作った物を販売している場合で、安価で販売したり、場合によっては無償で物を譲ったりしている場合は、事業としては認められにくいです。
もちろんお客さんとの関係や受注のために、値引きや赤字仕事もあり得ますが、事業であれば毎回毎回のことではないはずです。
自分でリスクを負っているか
例えば自分の名義でお金を借りたり、賠償責任を負ったりするような場合は、事業として認められやすいです。
客観的に事業をしていると言えるか
他人の目から見た場合、「この人は事業をしている」と見えるか、「本業の片手間に副業をやっている」と見えるかです。
- 日々その仕事しかしていない
- その仕事でご飯を食べている(あるいはこれからそうしようとしている)
- 屋号を掲げている
- その仕事の窓口となるようなもの(店舗、電話番号、HP、名刺など)を持っている
こういった点が見て取れるようであれば、事業として認められやすいかと思います。
明確な線引きは難しい
目安として4つの判断基準を紹介しましたが、明確な線引きや判断のためのフローチャートなどが公表されているわけではなく(裁判例などは存在します)、個々に判断するしかないです。
上記の基準を満たしていれば必ず事業所得として認められるわけでもなければ、満たしていないものがあっても事業所得として認められることもあり得ます。
事業所得に該当すれば享受できるメリット
事業所得と雑所得、税金的にどちらが得かと言えば、【事業所得】の方が有利です。
メリット①:赤字を相殺できる
事業所得で出た赤字は、他の所得との相殺が可能です(できないものもあります)。
メリット②:青色申告の特典が受けられる
事業所得では、申請書を出して認められれば、「青色申告」をすることができます。
青色申告をすることにより、次のような特典が受けられます。
- 相殺しきれなかった赤字を翌年以降3年間繰り越せる。
- 利益金額から特別控除ができる(10万円or55万円or65万円)。
- 30万円未満の固定資産を一括で経費にできる。
- 家族に支払った給与を経費にできる(様々な条件や相場などはあります)。
まとめ
副業だと雑所得と見られることが多く、事業所得にするには結構ハードルが高いです。
ちなみに会社であれば、所得を分類する必要はなく、全ての収支を一括で計算することができますので、そういった観点からも法人化を検討してみてもいいかもしれません(そちらの方が税金的に明らかに有利なら)。