相続財産に上場株式がある場合の調べ方

非上場株式に比べ、上場株式の株価の計算の仕方は簡単です。
次のうち最も安いものを使います(亡くなった時期と保有銘柄の会社の決算時期等によっては少し調整が入ることがあります)。

  • 亡くなった日の株価
  • 亡くなった月の平均株価
  • 亡くなった月の前月の平均株価
  • 亡くなった月の前々月の平均株価

これらの数値は「日本証券取引所」のHPで調べることができますし、後でお話する証券会社発行の残高証明書にも載せてくれることが多いです。

しかし、株式数を調べるのは少し大変です。
その手順についてご紹介します。

 

証券会社の残高証明書だけではダメ?

預金残高を調べるために銀行が発行する残高証明書を取り寄せるように、上場株式の株数などを調べる際にも証券会社から残高証明書を取り寄せる必要があります。

しかし上場株式について言えば、それだけでは不十分です。
理由は以下の通りです。

 

理由①:同じ銘柄を複数の証券会社に預けていることがある

例えば、X証券会社にA社株式を100株預けていたとすると、X証券会社から残高証明書を取り寄せれば、残高証明書には当然ですが「A社 100株」と表示されます。

しかし、Y証券会社にもA社株式を50株預けていると、X証券会社からの残高証明書だけではこの50株の存在がわかりません。

Y証券会社で取引していた事実を相続人が知っていれば(もしくは気づけば)、Y証券会社からも残高証明書を取り寄せればよいのですが、知らなければ(もしくは気づかなければ)この50株の存在を見落としてしまうことになります。

相続税の正しい計算にも影響しますが、せっかく相続できるものが手に入らなくなってしまいます。

 

理由②:「特別口座」に株式があるかもしれない

平成21年に株券が電子化される以前から証券会社に株券を預けていなかった場合は、信託銀行等において「特別口座」が設定され、そこで株主と保有株数の記録と管理がされています。

※上場会社の株式事務や株主名簿の管理等は、信託銀行が担っていることが多いです。

「特別口座」にて管理されている株式には、以下のようなものがあります。

  • 紙の株券で保有していた株式
  • 単元未満株(1取引単位(100株、1,000株毎など)に満たない株式。株式分割などで発生します)

このような「特別口座」で管理されている株式は、証券会社の残高証明書だけでは分からず、やはり申告漏れや相続漏れを起こしてしまいます。

 

理由③:もらっていない配当金があるかもしれない

配当金を振込ではなく、郵送された受領証を郵便局などに持って行って、現金でもらっていた場合には、もらい漏れがあるかもしれません。

配当金を受け取っているかどうかは、証券会社の残高証明書だけでは分かりません。
受け取れるはずのものを受け取らないのはもったいないですし、これも「未収配当金」という財産として相続税の課税対象になりますので、しっかり調べる必要があります。

 

知っている証券会社以外に、2か所+αに問い合わせが必要

取引があったことを相続人も知っている証券会社以外に、最低2か所問い合わせすべきところがあります。

 

証券保管振替機構(通称:ほふり)

平成21年の株券電子化に伴い、「株式会社証券保管振替機構」(通称:ほふり)にて、証券会社に口座を開設している人の情報を登録することになっています。

ほふりに相続人が情報の開示請求をすることで、口座を開設している証券会社が分かります。
ここで新たに判明した証券会社から残高証明書を取り寄せることで、思わぬ財産が見つかるかもしれません。

また、過去の住所でも同じように開示請求をすることで、当時開設していた証券口座が見つかることもあります。

 

信託銀行

ほふりと証券会社への問い合わせ・証明書取り寄せで保有銘柄が分かれば、次に各銘柄の株式事務や株主名簿管理をしている信託銀行がどこかを調べ、証明書を取り寄せます。

配当金の支払通知書に書いていますが、各銘柄の会社HPでもたいてい掲載されています。

取り寄せるのは、各銘柄とも次の3つの書類です(名称は各信託銀行によって少し異なります)。

  • 残高証明書・・・ある一定時点の株数
  • 異動証明書・・・株数の増減
  • 未払配当金証明書・・・支払っていない配当金があるかどうか

取り寄せる際は、被相続人の情報と依頼したい銘柄を伝えますが、「その他、被相続人名義の銘柄についてもお願いします」と伝えておくと、漏れがないかと思います(電話する必要があります)。

電話すると、数週間~2,3か月ほどで順次上記の証明書が郵送されてきます。

 

まとめ

上場株式は、評価の仕方が簡単な半面、資料の取り寄せは結構大変です。

相続税の正しい計算のためもありますが、相続できるはずのものを漏れなく相続するためにも、きちんと調べるようにしましょう。