7月10日から自筆証書遺言書保管制度がスタートします

今年7月10日から「自筆証書遺言書保管制度」がスタートします。

自筆証書遺言は、費用をかけず、簡単に作れるというメリットがある一方で、

  • 紛失の恐れがあったり、
  • 相続人が廃棄したり、隠したり、改ざんしたりする恐れがあったり、

といったデメリットもありました。
また、亡くなった後は、家庭裁判所に「検認」の申立をしなければならないという面倒さも
あります。

これらのデメリットを解決する手段として、これまでは「公正証書遺言」というものが
ありました。

公証人が法的に有効な形に仕上げてくますし、検認も不要なので、おすすめできるものでは
あるのですが、手間もお金もかかる点が人によってはネックにもなります。

これまでの自筆証書遺言のデメリットを補いつつ、手間もお金もあまりかからない手段として、
保管制度が創設される予定です。

 

【遺言者】保管の流れ

自筆証書遺言の保管の流れは次の通りです。

  作業 備考
自筆証書遺言を自分で作る。 封筒に入れる必要はありません。
どの法務局に保管するか決める。

保管の申請ができるのは、次のいずれかを管轄する法務局です。

  • 遺言者の住所
  • 遺言者の本籍地
  • 遺言者が所有している不動産の所在地
申請書を作成する。 法務省のHPからダウンロードできますし、法務局にも用紙があります。
法務局に保管申請の予約をする。  
法務局で保管の申請をする。

【必要書類】

  • 遺言書
  • 申請書
  • 本籍地の記載がある住民票(遺言書を書いてから3か月以内のもの)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、免許証など)
  • 収入印紙3,900円分(法務局内でも買えます)
保管証を受け取る。 保管証に記載されている「保管番号」は閲覧、撤回、変更などを行う時に必要になります。

※遺言書を保管できる法務局は、限られています(本局と一部の支局)。
 詳細は、法務省HPでご確認ください(この記事での「法務局」は、遺言書を保管できる所を指しています)。

 

【遺言者】生前に閲覧する

保管している遺言書は、遺言者の生前中は、遺言者本人だけが閲覧できます。

モニターで見せてもらうだけなら1,400円、原本を見せてもらうなら1,700円かかります。
(いずれも収入印紙で支払います。)

他に、顔写真付きの本人確認書類が必要です。

 

【遺言者】遺言を撤回する

遺言の撤回も、遺言者本人だけができます。

この場合は、本人確認書類を持っていくだけでよく、手数料は不要です。
(遺言書の保管をしてから住所などが変わっていたら、それを証明する書類が必要です。)

 

【遺言者ほか】変更の届出をする

住所などの変更があれば、届出が必要です。

閲覧や撤回の手続きと違い、遺言者本人だけでなく、法定代理人(成年後見人など)も届出が
可能で、全国どこの法務局でも手続きが可能です(遺言書の原本が保管されている所でなくても
構いません)。

この場合は、住所などが変わったことを証明する書類と請求する人の身分証明書などが
必要で、手数料はかかりません。

 

【相続人ほか】遺言書が保管されているかどうか確認する

ここからは、遺言者本人が亡くなった後の話です。
遺言書が法務局で保管されているかどうかの確認をすることができます。

  作業 備考
どの法務局で確認するか決める。 全国どこの法務局でも確認できます。
請求書を作成する。

請求できるのは、次の人たちです。

  • 相続人
  • 受遺者(遺言で財産をもらう人)
  • 遺言執行者
  • 上記の親権者や成年後見人などの法定代理人

戸籍謄本や請求人の住民票などが必要です。

法務局に請求の予約をする。  
法務局に請求する。 収入印紙800円分が必要です。
「遺言書保管事実証明書」を受け取る。 窓口受取でも郵送受取でも可能です。
(窓口受取なら本人確認書類が必要です。)

 

【相続人ほか】遺言書の内容の証明書を取得する

上の手続きは、遺言書が保管されているかどうかの確認だけですが、
内容の証明書(遺言書の写し)をもらうこともできます。

手続きの流れは上とほぼ同じです。
(被相続人と相続人全員の関係を証明する戸籍謄本などが必要なのと、収入印紙が1,400円分必要なところが違います。)

なお、証明書を受け取ると、他の相続人に対して、遺言書が保管されている旨の通知が
送られます。

 

【相続人ほか】遺言書の内容を閲覧する

遺言者の生前と同じく、原本やモニターでの閲覧もできます。
(手数料は生前の場合と同じです。)

証明書をもらう場合と同じく、閲覧をすると、他の相続人に対して、遺言書が保管されている
旨の通知が送られます。

 

保管制度の注意点

保管制度の創設によって、紛失や改ざんなどの恐れはなくなりましたが、
それでも法務局では内容の確認まではしてくれないので、法的に有効な遺言書が
できるかどうかという点では、まだ不安は残っています。

その点が不安であれば、公正証書遺言にするか、専門家(税理士、行政書士など)に
相談されることをおすすめします。

また、自筆でも公正証書でも、家族に発見してもらえないリスクはあります。
信頼できる家族に遺言書がある旨を伝えておいたり、エンディングノートなどに
その旨を書いておいて見てもらいやすくしたりしておきましょう。

 

まとめ

まだ早いのでは?と思われるかもしれませんが、私も自筆証書遺言を作成しています。
理由は、下記記事の通りです。

若い人こそ遺言書を書いておいた方がいい理由

7月10日に制度がスタートしたら、私も保管しに行ってみます。
そのこともまた記事で報告します。