自社株式を贈与したらやらなければならないこと
昨日(6/18)自社株式の評価の仕方についてご紹介しました。
今回は、実際に贈与するとなったら踏まなければならない手続きについてご紹介します。
目次
【あげる側】【もらう側】贈与契約を締結する
まずは、当事者間(あげる側ともらう側)とで贈与契約を結ぶ必要があります。
「あげます」
「もらいます」
の意思表示をするためです。
【あげる側】→【会社】「株式譲渡承認請求書」を提出する
財産の贈与は、あげる側ともらう側の合意があれば、自由に受け渡しができることが
多いのですが、自社株式に関しては、そう簡単にはいかないことが多いです。
日本の非上場企業では、定款で自社株式を「譲渡制限株式」としていることが多いです。
「譲渡制限株式」とは、譲渡(売買や贈与)を行うのに株主総会や取締役会
などの承認が必要な株式を言います(どの機関が承認するかは会社によって異なります)。
株式の譲渡を株主の自由意思に任せていると、所有者が把握できなくなったり、会社にとって
好ましくない人物に自社株式が渡ったりしてしまうので、それを防ぐために「譲渡制限」が
かけられるのです。
自社株式を贈与したい場合は、あげる側ともらう側の贈与契約だけでなく、あげる側から
その会社に対して、「○○(もらう側)に株式を贈与したいのですが・・・」という
「株式譲渡承認請求書」を提出し、承認してもらう必要があります。
【会社】承認する
譲渡承認請求を受けて、会社側では、これを承認する作業をします。
会社のどの機関(株主総会、取締役会など)が承認をするかは定款で決められています。
株主総会と決まっていれば「株主総会議事録」を作成し、取締役会と決まっていれば「取締役会議事録」を作成します(例は(臨時)株主総会議事録です)。
【会社】株主名簿を書き換える
会社が贈与を承認して、贈与が成立すると、株主の構成や持ち株数が変わりますので、
「株主名簿」を更新する必要があります。
株主名簿には、株主について下記の事項を記載する必要があります。
(申請内容によっては、5が不要だったり、逆に全株主について記載する必要があったり
します。)
- 氏名又は名称
- 住所
- 株式数
- 議決権数
- 議決権割合
平成28年10月より、会社の登記申請に当たって、株主名簿の添付が必要になる場合が
出てきました。
「会社法」では、会社の規模に関わらず、株主名簿の作成と備え付けが必要なのですが、
作成されていない会社が多いかと思います。
自社株式の贈与をきっかけに、株主名簿を作ることをお勧めします。
【会社】「別表二」を書き換える
贈与して最初の決算を迎えたら、法人税の申告書の「別表二」も書き換える必要が
あります。
「別表二」とは、会社の株主の一覧と、その会社が「同族会社」であるかどうかを判定する
ための書類です。
【もらう側】贈与税申告・納税をする
自社株式をもらった側は、もらった株式の評価額が110万円を超えていれば、
もらった年の翌年2月1日~3月15日(例年)までに贈与税の申告と納税をする必要があります。
その贈与について、「相続時精算課税制度」を使う場合には、最初の年は
戸籍謄本や住民票などが必要になりますので、早めに動いていた方がいいと思います。
まとめ
自社株式の贈与は、贈与契約をして贈与税申告をしたら、それで終わり、ではありません。
書類上の話ですが、段階を踏んで、手続きを踏む必要があるのです。