事業をしていなくても、後々のために残しておいた方がよい資料
事業をしていれば、その形態が個人事業であれ、会社であれ、領収書や請求書などの
資料を一定期間残しておかなければなりません。
そうしないと、経費として認められないこともあり、税金面(所得税や法人税、消費税
など)で損をすることになるからです。
では、事業をしていなければ、何かを買ったり、サービスを利用したりした時にもらえる
領収書などは取っておかなくてもよいのでしょうか?
結論から言うと、取っておかなくても全く問題はありません。
しかし、事業をしていない人でも確定申告や贈与税申告、相続税申告をすることがあり、
資料を残しておくことで税金面で得をすることがあります。
自宅の購入・新築時の資料
自宅を購入・新築する際には、売買(請負)契約書をはじめとして、実にたくさんの書類を
やり取りします。
これらの資料を残しておくことで最も効果を発揮する場面は、自宅の売却時です。
自宅を売却すれば、売却益に対して所得税がかかりますが、売買(請負)契約書などがあれば、
購入(新築)時の金額が分かりますので、売却益を大きく圧縮することができます。
逆にこういった資料がなく、購入(新築)時の金額がまったくもって分からなければ、
売却代金の5%しか引くことができず、所得税がより多くかかってしまう可能性があります。
ちなみに、自宅を売却した場合には、売却益から最大3,000万円を控除することができますので、
税金はかかりにくいのですが、タイミングによってはこの控除が使えない場合もありますので、
購入(新築)時の資料があるに越したことはありません。
また相続税申告では、自宅の土地を評価するのにヒントとなる資料が残っている場合も
あります。
さらに、今は事業をしていなくても、将来その自宅を使って事業をしたり、人に賃貸する
場合は、自宅の購入(新築)時の金額をもとに減価償却費を計算し、経費に計上することが
できます。
預金通帳
預金通帳を繰り越すと、古い通帳は捨ててしまうという方も一定数おられるようです。
しかし、通帳を残しておくことで、過去の資金使途(贈与や保険加入、大きな買い物など)や
資産の形成過程を追うことができ、相続の際に大変役に立ちます。
銀行に請求すれば過去の履歴を確認することもできますが、最長10年までしか追えない
ですし、少し見にくいです。
保険証券
保険証券があれば、当たり前かもしれませんが、今どの保険に入っているかが分かります
ので、相続の際、どの保険会社に保険金の請求をすればよいか、残された家族へのメッセージに
なります。
また、途中で契約内容を変更している場合(特に契約者を変更している場合)は、変更前の
保険証券も残しておくことで、相続税や贈与税の正確な計算に役立ちます。
車を購入した際の領収書・請求書
事業をしていない人が車を売却しても、売却益に対しては税金はかかりません。
しかし、相続があった場合には、車に対しても相続税がかかります。
その際の車の評価の仕方には、2つの方法があります。
- 時価を調べる方法
- 購入代金から減価償却費を引いた残額を評価額とする方法
1の時価については、インターネットで調べるか、中古車買い取り業者などに査定して
もらうことで分かります。
2については、購入時の領収書や請求書があれば、そこに載っている金額をもとに
減価償却費を計算することができます。
新車であれば6年(軽自動車は4年)経過していれば、減価償却が終わっていますので、
評価額を0円とすることができます。
ただし、ビンテージカーやクラッシクカーなど、通常の車とは違う価値を持った車
は、1の方法でしか評価ができません。
また、車についても不動産と同じように、今は事業をしていなくても、将来事業を始めて
自家用車を使う場合には、減価償却費の一部を経費にすることができますので、そういう
意味でも購入時の資料を取っておいて損はありません。
病院代や介護費用の領収書・請求書
請求日が亡くなる前の日付で、支払いが亡くなった後となった病院代や介護費用に
ついては、相続税の計算の際に財産額から差し引くことができますので、領収書や
請求書は残しておきましょう。
特に病院代の領収書は再発行に応じてくれないことが多いですので・・・
確定申告の医療費控除と違い、相続税の計算では領収書や請求書の保存は不要ですが、
証拠書類としてあるに越したことはありません。
(ちなみに、確定申告の医療費控除でも、領収書が無くても、健康保険組合などが
発行する明細で代用ができるようになっていますし、近々マイナンバーとの紐付けで
それも不要になる予定です。)
まとめ
事業をしていなくても、税金の申告をする機会はどこかであります。
その時に少しでも余計な税金を払わなくていいように、大事な書類は残しておくように
しましょう。
事業の場合は、届出をしていなければ、「スキャンして、原本は破棄」ということは
できませんが(その手続きもかなりややこしいです)、事業をしていなければそういう
制限もありませんので、「スキャンして、原本は破棄」でもOKです。