不動産の共有はお勧めしない理由

相続税申告のご依頼をいただき、資料の収集と財産評価、相続税の総額の計算を経た後で
行うのが、「遺産分割協議」です(遺言書がない場合)。

この遺産分割協議は、基本的には相続人の方に行っていただき、私はその話し合いに参加
しませんし、「このように分けてください」といった指示も行いません(「このように分けたら
税金はこうなります」といった、話し合いをする上での材料は提供します)。

ただし、例外としてお伝えしているのが、

 「不動産を共有にするのはお勧めしません

ということです(「共有にしないでください」とまでは言いません)。

それには理由があります。

 

不動産を共有にするとどうなるか?

不動産を共有にするとどういうことが起こるのでしょうか?
両親と子ども2人の家族で、父親が亡くなって不動産を長男と長女で2分の1ずつの共有で相続した場合で考えてみます。

一方の共有者である長男はこの不動産を「売りたい!」と考えていても、
もう一方の共有者である長女がこの不動産を「売りたくない!」と言えば、
この不動産はいつまで経っても売ることができません。

そうこうしているうちに、今度は長男や長女が亡くなってしまうと、話は余計に
ややこしくなります。

今度は、長男と長女のそれぞれの子ども(父親から見ると孫世代)に対して、
長男と長女の共有持分2分の1が相続されます。

ここでも孫たちによる共有が行われてしまうと、孫5人による共有状態になってしまい、
ますますこの不動産を処分することができなくなってしまいます。

さらに、孫の子どもやその子ども(ひ孫世代、玄孫世代)へと枝分かれしてしまうと、
この不動産をどうすることもできなくなってしまいます。

このようなことにならないよう、特にきょうだいによる不動産の共有はしないことを
お勧めしています。

※ここでは2分の1ずつで相続した場合を例にしていますが、10分の1や100分の1でも話は
同じですので、ご注意ください。

 

親子共有なら(まだ)OK

きょうだいでの共有はお勧めできませんが、親子での共有であればまだOKです。
(例は母と長男による共有)

なぜなら、母親の持分2分の1は、母親が亡くなった時に子どもに相続され、最終的には
子どもへ持分が集約されるからです。

ただしその場合は、母親は遺言書を書いて、母親の持分が長男に必ず相続されるよう
担保しておく必要があります