簡易課税を選ぶかどうかの判断方法
消費税の計算の仕方には、2つの方法があります。
- 本則課税
- 簡易課税
売上が初めて1,000万円を超え、消費税がかかるようになった時、どちらを選択するかを
どうやって判断すれば良いのでしょうか?
本則課税と簡易課税の違い
本則課税と簡易課税の違いは、ざっくり言ってしまうと、次の通りです。
- 本則課税→【(売上にかかる消費税)-(仕入・経費にかかる消費税)】で計算する方法
- 簡易課税→【(売上にかかる消費税)-(売上にかかる消費税×40~90%)】で計算する方法
本則課税の方は、(売上にかかる消費税)も(仕入・経費にかかる消費税)も集計しなければ
ならず、帳簿への記帳と領収書等の保存の両方が必要になり、手間がかかります。
一方、簡易課税の方は(売上にかかる消費税)だけ集計すればよく、仕入・経費に関する帳簿や
領収書等の保存は必要ない※ので、手間がかからないというメリットがあります。
(だから「簡易」課税なのです。)
※消費税では要件にはなっていませんが、法人税などでは一定期間保存しておかなければならないルールになっています。
簡易課税で申告するには
消費税の計算を簡易課税で行うには、以下の要件を満たす必要があります。
- 2年前の売上が5,000万円以下であること。
- 年度開始前に「届出書」を税務署に提出していること。
逆に言うと、本則課税の場合は、何の要件もないということになります。
簡易課税のデメリット
簡易課税は、計算が簡単というメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
いわゆる「2年縛り」というデメリットです。
簡易課税には、一度選択してしまうと、最低2年は簡易課税で消費税を計算しなければ
ならないというルールがあります。
そのため、後から「本則課税の方が良かった」と思っても、すぐに本則課税に戻ることが
できないのです。
本則課税と簡易課税、どちらが有利か?
本則課税と簡易課税、どちらが有利かを判定する方法についてお話したいと思います。
簡易課税の計算で使う率((売上にかかる消費税)-(売上にかかる消費税×40~90%)の
「40~90%」)は、営んでいる事業の種類によって次のように決まっています。
事業の種類 | 率 |
卸売業(事業者相手の商品販売) | 90% |
小売業(一般消費者相手の商品販売) | 80% |
製造業など | 70% |
サービス業など | 50% |
不動産業 | 40% |
飲食店・事業用の資産の売却・その他 | 60% |
※複数の事業を営んでいる場合は、これらを組み合わせて使うことがあります。
つまり、【(消費税のかかる仕入・経費)÷(消費税のかかる売上)】で計算した割合が
上の表の率よりも大きければ本則課税の方が有利、小さければ簡易課税の方が有利になります。
ここで、(消費税のかかる仕入・経費)からは、以下のような経費が除かれます。
消費税がかからないからです。
- 役員報酬・給与
- 法定福利費(会社負担の社会保険料)
- 租税公課
- 慶弔金
- 減価償却費(一括で経費にしている30万円未満の資産を除く)
- 保険料
- 地代、社宅家賃
- 支払利息
一般に、サービス業(50%)や不動産賃貸業(40%)などは、仕入がなく、消費税のかかる
経費も多くはないので、簡易課税の方が有利になる傾向はあります。
どうしても迷ったら、とりあえず本則課税
過去2,3年の決算数値から、上記の方法で試算してみて、有利な方を選んでもらえれば
よいと思いますが、そんなに変わらない場合は、どちらを選べばよいか迷ってしまうと
思います。
その場合は、とりあえず本則課税で行くことをお勧めします。
簡易課税を一度選んでしまうと、2年間は強制適用されてしまうからです。
本則課税なら、そういう縛りがないので、1年待って簡易課税にすることもできますし、
消費税については計算期間を3か月または1か月に短縮することもできますので、年の途中から
でも簡易課税にすることも可能です。
(ただし、簡易課税も計算期間の短縮も、2年縛りがありますので、注意は必要です。)