税理士試験体験記・私の場合③

税理士試験体験記のラストです。

最後は、税理士を目指すに当たって、税理士試験に挑戦するに当たって、よく皆さんが悩まれる事柄について、私の経験から意見を述べてみたいと思います。

 税理士試験体験記・私の場合①
 税理士試験体験記・私の場合②

 

受験科目の選択について

大学院の免除を使わず、5科目に合格するという道を選んだ場合、税法の3科目はどの科目を
選択すべきかについては、特に受験生の皆さんの悩みどころだと思います。

9つある税法科目の中で、実務の現場で特によく使う科目が、「国税4法」と呼ばれる次の税法です。

  • 法人税法
  • 所得税法
  • 相続税法
  • 消費税法

これらは、常に実務で触れる税法なので、合否はともかく、みっちり勉強しておくと
とても役に立ちます。

しかし、覚える量も膨大なので、勉強時間が確保できないと合格するのが難しい科目
ではあります。

そこで、覚えるべき量が少ない、他の5つの税法科目を受験するという選択肢も
あります(量が少ないので「ミニ税法」と呼ばれます)。

しかし、覚える量が少なく、多くの受験生が合格レベルに達してしまうため、
上位10~20%しか受からない税理士試験では、満点を取れなければ合格できないという
ことも容易に起こり得ます。

それがものすごいプレッシャーに感じる人もいるかもしれません。
国税4法の方がその意味では楽かもしれません。

また、税理士になってからやりたい仕事によって、受験する科目の構成を考えても良いでしょう。

  • 主に会社(法人)を相手に仕事をしたい→法人税法、消費税法、事業税など
  • 主に資産税の仕事をしたい→所得税法、相続税法、固定資産税など

さらに、勉強してみて、自分にとっての向き不向きで決めてもいいかもしれません。

以上を踏まえて私の意見を述べるなら、こうです。

「ぶっちゃけ、税理士になれるなら、どの科目でもいいんじゃないですか?」
 (もちろん、科目選択のルールは守った上での話ですが)

その理由は、次の通りです。

  1. お客様にとってはどうでもいいことだから。
    お客様が気にされるのは、その人が税理士であるかどうか、そして税理士としての
    職務を全うしてくれるかどうかです。

    その人がどうやって税理士になったのか、どの科目に受かったのかなんてことは
    気にしません(少なくとも私は、そんなことを気にしているお客様にお会いした
    ことがありません)。

    気にするとすれば、合格科目でマウントを取りたい同業の税理士だけです。

  2. 必要な知識は実務で身に付くから。
    もちろん、受験勉強で事前に学んでおけば、実務に入ってから大きなアドバンテージに
    なると思います。

    しかし、受験勉強をしていれば、いきなり実務ができるわけではありませんし、
    逆に本当に必要な知識は実務の中で自然と身に付きますし、やりながら勉強もできます。

    また、実際の現場でやってみないと身に付かないこともあります。

    私の場合、相続税法を勉強も受験もしたことがありませんでしたが、実務で
    相続税申告などをやらせて頂く中で、一通りのことはできるようになりました。

  3. 1年でも早く税理士になった方がいいから。
    とにかく、税理士としてのスタートラインに1年でも早く立つことが大切です。

    税理士になったからといって仕事にありつける時代でもありませんが、
    税理士になれなければ、税理士としての仕事はできませんし、独立するチャンスも
    生まれません。

    また、独立するなら、体力も気力もある若いうちがいいです。
    そのためには1年でも早く税理士になることが欠かせません。

 

大学院の科目免除を使った方がいいか

私自身は大学院の科目免除を使いませんでしたが(お金が無かったのが一番の理由ですが)、
人にアドバイスするなら、こう言います。

「お金の問題が解決できるのであれば、そしてそちらの方があなたにとって近道なら、
ぜひ大学院に行った方がいいです。」

理由は、科目選択と同じです。とにかく、まず税理士になることが大事なのです。

私の場合は、幸運にも3年で試験に合格することができましたが、税理士試験をやり直すなら、
大学院の科目免除を使うと思いますし(お金があれば)、息子が将来税理士になりたいと言えば、
大学院に行くことを勧めると思います。

 

受験勉強に専念した方がよいか、働きながら勉強した方がよいか

受験勉強に専念できれば、時間がたっぷり取れますので、その分早く試験に合格
する可能性が高まります。

しかし、その間収入を得ることができず、お金の面が心配になります。

私の場合は、受講代を賄うために1年の前半(9~3月)だけアルバイトをする以外は
ほぼ専念していましたし、3年目に至ってはアルバイトもせず、完全に受験勉強に
専念していました(その間)。

そして試験合格後に初めて会計事務所に就職しましたが、そこで働いてみて思ったのが、

「自分なら働きながら受験勉強をするのは無理だな、先に受かっといてよかったな」

ということでした。

仕事と勉強を両立できる人も一定の割合でいるでしょうが、定時で仕事を切り上げられた
としても、夕方から授業を受け、夜も休みの日も勉強をするというのは、根気の要ること
だと思います。

そのため、もし受験勉強に専念できる環境(貯蓄がある、親や配偶者からの援助・借金が
期待できる等)があるのであれば、ぜひ受験勉強に専念することをお勧めします。

私の経験で言えば、受験勉強に専念すれば収入が絶たれ、貯蓄もだんだん減っていって
しまいますので、「早く受からなければ」という良い意味でのプレッシャー、
覚悟のようなものが生まれます。

時間もたっぷり確保できますし、その方が短期合格するには良いかもしれません。

事業資金の借り入れと同じで、「時間をお金で買う」という発想です。

それが難しければ、1,2年だけ専念して2,3科目だけは合格し、後は働きながらお金を
貯めて大学院に進学し、科目免除を狙うというのもありです。

私の経験だけで言うなら、働きながら5科目受かるのは至難の技だと思います。

 

まとめ

ここまで3回シリーズで、私の経験からお話できることを書いてきました。

全ての内容が、全ての方の参考になるとは思いませんし、あくまで私見ではあるのですが、
いくらかでも皆さんにとってのヒントになれば幸いです。