若い人こそ遺言書を書いておいた方がいい理由

「遺言書」というと、年配の方が書くイメージがありますが、若い方が書いても構いません。
民法では、15歳以上であれば遺言書で財産を引き継がせることができます。

若い世代であれば「遺言書なんてまだ早い」と考える方も多いかもしれませんが(そもそも遺言書のことなんか頭の片隅にも無いかもしれませんが)、若い世代には若い世代特有の、「遺言書を書いておいた方がいい理由」があります。

ちなみに、現在36歳の私も書いています。

 

残された人たちに「遺産分割協議」の手間をかけさせないため

若い方の中でも結婚している方は、特に遺言書を書いておくことをおすすめします。
結婚している若い世代の方は、次のいずれかに該当することが圧倒的に多いかと思います。

  1. 結婚しているが子どもがいない(今後も作る予定が無い)。
  2. 結婚していて子どももいるが、子どもが未成年である。

遺言書が無いまま亡くなった場合は、残された相続人による「遺産分割協議」をする必要がありますが、どちらの場合でも、面倒なことが起こる可能性があります。

 

結婚しているが子どもがいない場合

結婚しているが子どもがいない場合の相続人の構成は次のようになります。

  1. 親が健在の場合(両親が亡くなっている場合は祖父母の誰かが健在な場合)
    配偶者と親(または健在な祖父母)が相続人になります。
  2. 両親も祖父母も亡くなっている場合
    配偶者ときょうだいが相続人になります。

つまり残された配偶者は、相手の両親もしくはきょうだいと遺産分割協議をしなければならなくなります。

お互いに仲が良かったり、全財産を配偶者が引き継ぐことについて納得してくれたりする場合は特に問題はないかもしれませんが、そうでない場合はお互いに話し合いが負担となってしまいます。

精神的にもしんどいかと思いますし、住まいが離れていると話し合いの度に移動するのもしんどいかと思います。

もし遺言書で「全財産を配偶者に相続させる」旨を書いておけば、話し合いをする必要がなく、相続人にかかる負担を減らしてあげることができます。

遺留分の問題がありますが、きょうだいの場合は遺留分は無く両親についても法定相続分1/3×1/2=1/6とそこまで大きくはありません(このくらいであれば、生命保険でカバーしてもいいかもしれません)。

※遺言書で財産をもらえなくても、相続人が最低限主張できる取り分

 

結婚していて子どもがいるが、子どもが未成年の場合

若い世代だと、子どもがいてもまだ小さいという方が圧倒的に多いかと思います。
(私の子どもも6歳(小学1年生)と4歳(幼稚園年中)です。)

子どもがいれば、何歳であろうと配偶者と子どもが相続人にはなるのですが、未成年者については遺産分割協議をすることができません。

かと言って、配偶者が未成年の子どもの代理人となって遺産分割協議書を作ることも禁じられています。

そのため、未成年の子どもの代理人を立てる必要があります。
この代理人は、候補者を立てた上で、家庭裁判所に選任してもらう必要があります(身内ではおじ・おば、他人では司法書士などの士業者が多いです)。

この申立は、遺産分割協議書の案も出す必要がありますが、未成年の子どもについては法定相続分以上(配偶者と子ども1人なら2分の1以上)を相続する内容でなければ、財産の内容がどうであれ認められない可能性が高く、財産の管理という点で不都合な状態となります。

遺言書があれば、遺産分割協議の必要はありませんので、代理人を立てる必要も無くなります。

 

相続手続きがラクになる

遺言書があれば、不動産の名義変更や預貯金などの解約・換金手続きもラクになります。

特に不動産については、名義変更がスムーズになりますし、共有も避けられますので、その後売却がしやすくはなります。

 

若い人には自筆証書遺言がおすすめ

このように、若い世代特有の理由(遺言書が無ければ残された家族に負担がかかる)から、若い方であっても遺言書を書いておくことをおすすめします。

若い方が遺言書を書く場合は、「自筆証書遺言」をおすすめします。
その理由は2つあります。

  1. 公正証書遺言に比べて、安い費用で作ることができる。
  2. 書き換えがしやすい。

特に2については、若い方ですと次のような変化が容易に起こり得ます。

  1. 家族の変化(子どもができた、増えた、成人した、就職した、結婚した、孫ができた)
  2. 財産の変化(貯蓄が増えた、家を買った、売った)
  3. 環境の変化(引っ越し、転職、退職)
  4. 心境の変化(この人にも財産をあげたくなった、配分を変えたい)

自筆証書遺言ですと、以前の遺言書は破棄して、新しく書き換えればよいだけなので、変化に対応がしやすいです。(公正証書遺言でも書き換えは可能ですが、手間とお金がかかりますので、どうしても二の足を踏んでしまいます。)

ちょっと前までは、自筆証書遺言は全文を手書きで作成しなければなりませんでしたが、近年の改正で、財産目録についてはパソコン作成や財産に関する書類での代用(登記簿謄本や通帳のコピーなど)も認められており、書きやすくなっています。

 自筆証書遺言のルールが変わりました①

 自筆証書遺言のルールが変わりました②

 自筆で「とりあえず遺言書」を書いておきましょう