どんな財産があるか分からない時の調べ方
「自分の親に相続があったけど、どんな財産をどの程度持っていたか、全く見当がつかない」
ということはよくあることです。
その場合の、親御さんの財産を漏れなく調べる方法についてお話します。
不動産の調べ方
名寄帳を取得する
不動産を所有していれば、不動産の所在地の市町村から「固定資産税納税通知書」が届いているはずです。
これを見れば、その人の大体の不動産が分かります。
しかし、これで終わってはいけません。
どの市町村に不動産があるかが分かったら、「固定資産税課税台帳」(名寄帳)を取り寄せましょう。
この名寄帳は、記載内容としては納税通知書とほぼ同じですが、それでも取り寄せるのには意味があります。
それは、「届いている納税通知書に載っている不動産以外の不動産がないか調べるため」です。
次のような不動産がある場合には、納税通知書が所有者のもとに届かないことがあり、その不動産の
存在に気づけないことがあります。
1.共有の不動産
不動産を誰かと共有していると、納税通知書は共有者の中の誰か1人に代表で送られていること
があります。
2.非課税の不動産
非課税の不動産については固定資産税がかからないので、わざわざ納税通知書を送らないという
ことがあります。
固定資産税は非課税であっても、相続税の課税対象になりますので、もれなく調べる必要はあります。
また、預金通帳を調べれば、毎年(または3か月に1回)、固定資産税が引き落とされていることがあります。
ここから、どの市町村に不動産があるか、手がかりを掴めることもあります。
登記事項証明書を取得する
どこに不動産があるかが分かったら、「登記事項証明書」(謄本)を取り寄せてみましょう。
登記事項証明書から次のことが分かります。
- 共有している場合は、共有持ち分(誰と共有しているかもわかります)
- 抵当権設定の有無→ここから借金や保証債務の存在が分かることもあります。
登記事項証明書は、法務局から取り寄せてもいいのですが、どこかに証明書として出すことは少なく、中身さえ分かればよいので、「登記情報提供サービス」から情報を取得することをお勧めします。
こちらの方が、料金が安く済みますし、情報がすぐに手に入るので、おすすめです。
預貯金や株式などの調べ方
預貯金については、通帳が残っていれば、その金融機関に対して照会をかけることができます。
通帳が残っていない口座の存在が分かることもあります。
しかし、万が一通帳が見当たらなければ、親御さんが取引してそうな金融機関に当たってみるしかありません。
- 金融機関からもらったカレンダーがあれば、そこと取引しているはず。
- 最寄りの金融機関に行ってみる。
- ゆうちょ銀行やメガバンク、地元の地銀・信金には必ず当たってみる。
- 農業をしていれば、JAに当たってみる。
株式や投資信託については、証券会社に照会をかける必要がありますが、年4回ほど送られてくる
「取引残高報告書」から取引のある証券会社とどんな銘柄を持っていたかが分かります。
また、通帳を見て、配当金が定期的(1年or半年に1回)に入金されていれば、どの銘柄を持っているかが分かりますでの、その銘柄の会社の株式事務を担当する信託銀行(どの信託銀行かは、その会社のHPを見れば分かります)に問い合わせれば、残高証明書を送ってもらえます。
生命保険契約の調べ方
生命保険契約については、保険証券が残っていれば、それを確認するのが一番です。
残っていなければ、保険会社から年1回届く「契約内容の確認」の封書から確認することもできます。
また、預金通帳から保険料が定期的に引き落とされていれば、それを手がかりに保険会社に照会をかけることもできます。
それでも見当がつかない場合は、「一般社団法人生命保険協会」に照会をかけることで見つけることも可能です。
債務の調べ方
債権や債務については、親御さんが生前に整理をしていないと、その全体像を掴むのは困難です。
しかし、親御さんの財産を相続することになると、債務もすべて承継しなければならなくなるため、
債務についてはきっちり調べる必要があります。
債務のうち、銀行借入・カード借入・消費者金融借入などは、信用情報機関への開示請求を行うことでほとんどを把握することができます。
また、車を持っていた場合は自動車ローンが残っている可能性があります。
(毎月割賦払いしていれば、通帳などに記録されていると思います。)
クレジットカードを持っていれば、カード明細が届いているはずなので、そこからキャッシングをしているかが分かります。
それ以外の個人的なお金の貸し借りについては、契約書(借用書)や日記、預金履歴などから把握していくしかありません。
事業をしていた場合
親御さんが事業をしていた場合は、事業に関する財産・債務についても調べる必要があります。
個人事業の場合は、決算書や申告書を見れば分かります。
- 売掛金・未収入金
- 貸付金
- 固定資産(事業用の不動産、車、器具備品、機械など)
- 損害保険契約
- 借入金
- 買掛金・未払金(以上は、決算書から分かります)
- 生命保険契約
- 小規模企業共済契約
また、会社を経営していた場合は、次の財産・債務に注意する必要があります。
- 会社の株式→法人税申告書「別表2」で分かります。
- 会社とのお金の貸し借り
→「勘定科目内訳明細書」という書類で分かります。
特に、「役員(長期)借入金」(親御さんからすれば会社への貸付金)については、返済の見込みがない可能性があるにも関わらず、相続税の課税対象となる可能性が高いですので、要注意です。 - 金融機関からの借入金
→親御さんが個人的に保証人になっている場合には、その地位も引き継ぐことになりますので、
保証人になっていないかどうか精査する必要があります。
(保証人になっていても、基本的にはその借入金を財産から差し引いて相続税を計算することはできません)
まとめ
財産・債務の有無を精査する狙いは、相続税額の把握や相続できる財産は漏れなく取得することにありますが、それだけではありません。
債務が多い場合にはそれを意図せず引き継いでしまうことを防ぐ効果もあります。
相続する・しないを決めるのは、基本的に相続から3か月以内ですので、財産・債務の調査はスピード勝負になります。
その他の財産・債務については、こちらの記事もご参照ください。