売却した不動産の取得費を知る方法
不動産を売却して利益が出た場合は、通常、売却益に対して約2割の税金がかかります。
この税金がなるべくかからないようにするための特典がいくつかありますが、要件があり、すべての売却に対して使えるわけではありません。
なるべく税金がかからないようにするには、売却した不動産の取得費(購入した時の金額)を知ることが肝心です。
目次
売却益の計算方法
不動産の売却益は、次のように計算します。
不動産の売却代金
△ 不動産の取得費
△売却の際の諸経費
= 不動産の売却益
そのため、売却益を抑えるためには、不動産の取得費や売却の際の諸経費をなるべく多く計上できるようにすることが大事です。
購入時の契約書から取得費を計算する
不動産の取得費は、売却した不動産を購入した時の売買契約書や請負契約書(戸建て住宅の場合)から計算します。
このうち土地については、購入時の金額をそのまま取得費として使うことができます。
建物については、経年劣化による価値の減少を取得費に反映=減価償却をする必要があります。
自宅の場合の計算方法は、次の通りです。
建物の購入金額(A)-A×0.9×償却率(下記)×経過年数(6か月以上の端数は1年に切上)
事業用や賃貸用の不動産については、決算書に載っている金額をそのまま使います(減価償却費の月割額を差し引く必要はあります)。
建物の値段が分からない場合の対処法
特に中古で購入している場合には、土地と建物の値段が区分されず、一括で○○○○万円と契約書に記載されていることも多いかと思います。
その場合には、次のようにして建物の値段を割り出すことができます。
消費税額から逆算する
(うち消費税○○○万円)という具合に消費税額が記載されていれば、そこから建物の金額を逆算することができます。
土地の売買には消費税がかかりませんが、建物の売買には消費税がかかるからです。
例えば、平成20年に土地・建物一括で4,000万円で購入していたとして、その中に消費税が50万円かかっていたとしたら、次のように計算します。
建物:50万円÷5%=1,000万円
1,000万円+50万円=1,050万円
土地:4,000万円ー1,050万円=2,950万円
契約の年月日などで、適用される消費税率が分かりますので、その税率を用いて逆算することになります。
建築年・構造・床面積から算出する
登記されている建物なら、謄本から建築年・構造・床面積が分かります。
これらを用いて購入時の建物の値段を算出する方法もあります。
これは、国土交通省の統計をもとに、国税庁が発表している「建築年・構造ごとの1㎡当たりの工事費予定額」です。
建築年と構造がぶつかるところの金額(千円)に床面積を掛ければ、新築時の建物の値段を出すことができます。
購入した時点で中古であれば、新築時から購入時までの減価償却費を算出する必要があります。
契約書が残っていない場合の対処法
以上は、契約書が残っている場合の対処法ですが、特に古い不動さんだと契約書が残っていない場合もあるかと思います。
その場合は、次のような対処法があります。
借入金額から類推する
ローンを組んで購入している場合には、土地や建物に「抵当権」というものが設定されているかと思います。
「抵当権」とは、その不動産をローンの担保とする権利のことです。
土地や建物の謄本を見れば、ローンの金額などが載っていますので、それを基に、上記の方法で土地・建物の値段を割り出すこともできます。
それでも分からない場合は
それでも分からない場合は、「売却代金×5%」を取得費とします(概算取得費と言います)。
なお、上述の方法で取得費が分かっている場合でも、この概算取得費の方が大きければ、概算取得費を使うこともできます(昔に購入した不動産であれば、そういうこともありえます)。
こんなものも取得費になる!
ここまでは、土地・建物本体の値段の調べ方でしたが、他にもこんな費用が取得費になります。
- 不動産を購入・相続・贈与などで取得した時にかかった登記費用、登録免許税、不動産取得税、印紙税など(事業用については、事業や不動産所得の経費)
- 購入時の仲介手数料
- 立退料
- 土地の造成費用や測量費
- 建物の取壊し費用(建物付き土地を購入してから1年以内に取り壊した場合など)
- リフォーム代
まとめ
特に自宅などは、はじめから売るつもりで買う人はそんなにいないかと思います。
しかし、取得費が分かっていれば、いざ売る時に余計な税金を支払わなくて済みますので、契約書や領収書などの資料をきっちり取っておきましょう。