医療費控除のよくある誤解

「確定申告」と聞いてよく思い浮かぶフレーズの1つが、「医療費控除」だと思います(私だけ?!)。

医療費控除に関する、よくある誤解と、損をしない(せっかく戻ってくるはずの還付金を受け取れなかったり、納税額が増えたりすること)ための行動についてまとめてみました。

 

よくある誤解① 医療費控除をすれば、「医療費」が戻ってくる

この時期、各地(公民館や市役所など)で開催される「確定申告相談会」。

当番の日、我々税理士は終日相談会場に詰めて、来場者の方の確定申告の相談(持ってきてもらった書類をもとに、申告書の書き方を教えたり、電子申告をしやすいように資料を整理したりする)に乗ります。

※地域によって、当番の有無や頻度が違うみたいです。勤務時代に所属した支部では、2~3日程度従事していましたが、開業後に移った支部では、何年かに1回のようです。

年金生活をされている方の還付申告や、住宅ローン控除1年目の方の申告、比較的小規模な個人事業主の申告が多いのですが、そこでよく聞かれる誤解が、表題の内容です。

「医療費控除」とは、

「医療費」が戻ってくるもの

ではなく、

「医療費」をたくさん使った結果、「税金」が返ってくる(または減る)

というものです。

 

なので、そもそも、事前に給与や年金から天引きされた税金がない場合(給与や年金が一定額以下だと、税金の天引きはありません)は、医療費控除をしても、税金の還付はありません。

 

その場合、所得税の確定申告は必要ありませんが、住民税の申告をすることで、6月以降に納める住民税を減らせる効果がある可能性がありますので、あきらめてはいけません。

 

よくある誤解② 医療費が10万円を超えないと医療費控除はできない

もう1つ、メジャーな誤解として、「10万円超の医療費がないと医療費控除はできない」ということが言われます。

「10万円」という金額が一人歩きしていますが、医療費控除ができる金額とは、正確には次の金額を言います。

<医療費控除できる金額>

(医療費)ー(入院保険金や高額療養費などの一時金)ーA=医療費控除額(上限200万円)

A:次のうち少ない方の金額

 ①所得金額(繰越の損失などを控除した後の金額)×5%

 ②10万円

つまり、所得金額が200万円以上なら、10万円を超えた部分の医療費しか控除が受けられない(200万円×5%=10万円)のです。

逆に言うと、所得金額が200万円未満なら、医療費が10万円を超えていなくても、医療費控除を受けられる可能性があります。

例えば、給与収入が年間120万円(給与「所得」だと55万円)、医療費が5万円だった場合は、次のようになります(他に控除無し)。

①勤務先での年末調整の結果、所得税額は8,600円

②医療費控除額
 550,000円×5%=27,500円<100,000円 →27,500円を超える医療費が控除の対象
 50,000円ー27,500円=22,500円

③還付税額
 (550,000円ー380,000円(基礎控除)-22,500円(医療費控除)、千円未満切捨て)×5.105%=7,249円
 7,249円ー8,600円=△1,351円
→これが返ってくる税額です。

※ちなみに、医療費控除の結果、住民税は、22,000円(医療費控除しなかった場合)→19,200円(医療費控除した場合)となります。

 

家庭での医療費の総額が10万円を超えなかった場合、所得の多い人(例えばご主人)では医療費控除できないけれども、所得の少ない人(例えばパートをしている奥さん)で医療費控除ができるということもあります。
(逆に、10万円を超える場合であれば、家族で一番所得が多い人で医療費控除をした方が有利です。)

家族全員の医療費をまとめて、誰か1人の確定申告で医療費控除ができます。

10万円を超えなかったからといって、医療費控除をあきらめないようにしましょう。

 

医療費控除を忘れていても、5年以内ならやり直せる

医療費控除を忘れていた(または確定申告そのものをしていなかった)としても、5年以内であれば申告ができますので、やはりあきらめないようにしましょう。

医療費控除には、病院や調剤薬局、ドラッグストアでの領収書などが必要です。

過去の分は捨ててしまっている場合もあるかもしれませんが、平成29年分の確定申告からは、領収書がなくても、協会けんぽや職場の健康保険組合などが出してくれる「医療費のお知らせ」を使うことができ、再発行にも応じてくれます(ドラッグストアへの支払は載っていないので、ドラッグストアの領収書は必要)。