相続対策=相続税対策 ではない①-納税対策

相続対策というと、すぐに思い浮かぶのが、相続「税」対策です。

もちろん相続税対策も重要ですし、取れる対策は取るべきですが、他にも考えるべき対策はあります。

それが、次の3つです。

  • 納税対策
  • 分割対策
  • 相続手続き対策

今日は、納税対策についてお話したいと思います。

相続税は「10か月以内」「現金一括納付」が原則

相続税の納税には、2つの基本的なルールがあります。

  1. 亡くなられてから10か月以内に納付する。
  2. 現金で一括納付する。

この「10か月以内に納税資金を用意しなければならない」というのが難点です。

財産が全て現預金なら、問題なく納税できます。

しかし、財産のほとんどが不動産であれば、相続した現預金<相続税額 となることも起こりえます。

そうなると、相続した現預金だけでは相続税の納税ができず、相続人の手持のお金から持ち出しで支払うか、不動産を一部切り売りして納税資金を工面する必要も出てきます。

それでも良いというのであれば良いのですが(見方を変えると、いくらかの持ち出しをするか不動産の一部切り売りで財産を取得できるということなので)、そうしたくないということであれば、納税対策も考える必要があります。

なお、現金一括納付ができない場合は、「延納」(分割払い)や「物納」(相続財産現物を納める)という方法もありますが、別途手続きが必要になります。

納税対策の3ステップ

シミュレーションをしよう

まずは、①相続税はいくらかかるか②手持ちの現預金で支払うことができるかをシミュレーションする必要があります。

だいたいの相続税額を知る方法

不動産の査定をしよう

手持ちの金融資産額が相続税の予想税額に足りない場合は、不動産の査定をして、だいたいいくらで売れるか、そもそも売れるかどうかなどを把握しておきましょう。

不動産の査定は、不動産鑑定士に鑑定してもらう方法もありますが、不動産会社に簡易な査定を依頼した方が安上がりです(無料で査定してもらえるところも多いです)。

査定額や売りやすさ・売りにくさを早めに把握しておくことで、実際の相続のときに慌てずに済みます。

対策をしよう

現状把握ができたら、対策に移ります。

一番シンプルなのが、売却してもよい・売却できる不動産を売却することですが、売却益に対して譲渡所得税(20.315%)がかかります。

納税資金は欲しいが、外部には売却したくないという場合には、会社を設立して、そこに売却するという方法もあります(賃貸用不動産などがある場合)。

これは、

  1. 自分の子供に会社を設立させ、
  2. その会社が銀行から融資を受け、
  3. そのお金で不動産を購入させる。

という方法です。

これにより、

  1. 不動産を外部に売ることなく、自分の子供に(会社を通して)不動産を移すことができる。
  2. 自分は現預金を手に入れることができる(そこから譲渡所得税を支払う必要はありますが)。

というメリットがあります。

ただし、融資に当たっては、不動産の資産価値や利回り、法人化の妥当性(相続税対策として効果的かどうかなど)などがチェックされますので、事業として成り立つかどうかについては十分に注意する必要があります。

相続後に売るのも一案

急いで売るのではなく、相続が発生してから売るのも一案です。

例えば、ご自宅を配偶者の方が相続したのであれば、これを売却しても

「小規模宅地等の特例」(宅地の課税対象額を最大80%カットできる制度)

を受けることができます。

これが、生前に売却していれば、売却代金に対してまるまる相続税がかかってきてしまいます。

売却益に対しては、

  • 「3,000万円控除」(自宅の売却益から最大3,000万円を控除できる制度)や
  • 「買い替え特例」(自宅を買い替えたら、売却益に対する税金を繰り延べられる制度)

などを使うことで、譲渡所得税を抑えることも可能です。

また、亡くなられてから3年10か月以内に売却すると、売却した財産に対する相続税額を売却益から差し引けるという特例もあります。

ただし、納税の期限は10か月以内ですので、急いで売ろうとすると足元を見られる可能性もあり、注意が必要です。